RPA を自作するチュートリアルですが、今回は直接的な RPA の作成の話ではなく、その作成の補助や計画・設計に使用できるフローチャート、およびフローチャート作成のためのツールを紹介します。もちろん無料です。
RPA の自作にはオンラインフローチャートが便利
この記事を読むと分かること
- 無料のオンライン作図ツールのGitMindでフローチャートを作成する方法
- フローチャートの作成の仕方
- RPA を自作する上でフローチャートをどう使うか
この記事がおすすめな人
- とりあえず無料でフローチャートやマインドマップ、組織図といったネットワーク図を描きたい人
- フローチャートって何? という人
- RPA ツールを使って、どんどん自分で業務を効率化したい人
RPAの自作に興味がある人におすすめ
フリーのRPA ツール、Pulover’s Macro Creator でRPA を自作するチュートリアルを連載しています。
フローチャートとは?
フローチャート(流れ図・flowchart)は一連の「流れ」がある作業・処理を図示して分かりやすく整理するためのものです。
古くから、ソフトウェア開発・プログラミングなどで使われていますが、ソフトウェアエンジニアリングだけのものではなく、一般的な業務の流れを説明するマニュアルとして用いたり、また図示することで業務のムダ・問題点を発見するためのツールとしても使われます。
新QC 7つ道具の1つである PDPC 法でもフローチャートが活用されます。
もちろん、手書きしたり、汎用的なドローイングツールで作成することもできます。ただ、フローチャートでは文字を囲む「囲い形」に意味があるため、専用のドローイングツールを使うのが便利です。
この記事では、GitMind を利用しますが、他にも色々なツールがあります。
GitMind とは?
GitMind はその名の通り、マインドマップ作成ツールです。しかし、マインドマップ以外にも、フローチャートを始め、UML図、スイムレーン図、特性要因図や組織図といった、ソフトウェア開発・ビジネスでよく使用される図表のテンプレートをもっており、素早くこれらのネットワーク図を作成するのに向いています。
また、ブラウザ上で動作するオンラインツールなので、ネットワークに繋がっていればどんなPCでも使用可能です。アカウントを作成することで使用できますが、Google アカウントやSNS アカウントでログインすればすぐに使い始めることもできるので、「ちょっとだけ思考を整理したい」というときに素早く作成できるところも強みです。
モバイルアプリも用意されているので、移動中などにスマートフォンで作業を行ったり、見直したりすることもできます。
RPA におけるフローチャート
RPA を作成する際に使用するフローチャートは、伝統的なソフトウェア開発で使用されるものと同じです。
つまり、Pulover’s Macro CreatorではIf文、Power Automate Desktop でいえば「条件」やループが複雑なときに、思考を整理する手助けに使います。あるいは、複数人での作業や引き継ぎのために、 RPA に添付する資料として残しておくと、より堅牢なシステムを構築できるでしょう。
もうひとつ、 RPA 化を行う前に業務フローを整理するためにも使用できます。これはPC上の操作といった細かな部分ではなく、大きな業務フロー全体(部署をまたぐ場合は、スイムレーン図の方がいいかもしれません)をフローチャートとして表現し、どの部分を RPA で自動化するのか。自動化した際に問題が発生しないかを検討するためにも用います。
フローチャート作成における注意点
フローチャートの記号は大体標準化されていますが、人・団体によって使用方法が異なったり、表現方法が異なる場合があります。
慣れていない場合や複数人で共有する場合は凡例を用意しておくと混乱せずにすむでしょう。
GitMind でのフローチャートの作成
アカウントの作成
GitMindのページアクセスしたら、ログインボタンをクリックします。
新規にメールアドレスとパスワードでアカウントを使用することもできますが、ログインボタンの下にある、「他のアカウントでログイン」から、Google, SNSアカウントでログインすることもできます。
これらのサービスではSNSアカウントと連携した上で情報入力を求められる場合もありますが、GitMind と Google アカウントの組み合わせであれば、特に追加情報の入力もなくすぐに使い始めることができました。
テンプレートから新規のフローチャートを作成
アカウントを作成すると、ヘッダーのメニューに「人気なテンプレート」というものがあるので、これをクリックします。
左側のメニューから、「フローチャート」を選択し、
右側のパネルから、「一般的なプロセス」を選びましょう。
「一般的なプロセス」のプレビューが表示されるので、画面右上にある、「テンプレートを使用」ボタンをクリックします。
これでテンプレートが読み込まれ、フローチャートを作成する準備が整いました。
GitMindの基本的な操作
共通事項
通常のドローイングツールと同様に、オブジェクト(図のパーツ・記号)をクリックすると選択・ドラッグで移動ができます。
記号をクリックして選択した状態では、右側のパネルが変化し、スタイルの設定ができようになります(色や線など)。
新規オブジェクト・記号の追加
右側の「基本フローチャート」などから、使いたい記号をドラッグすることで、チャートに新しい記号を追加できます。このとき、通常は色などのスタイルが適用されていない状態で追加されます。
また、記号をドラッグではなくクリックすると、記号が自動で追加されますが、追加位置が指定できないので余り使用しません。まとめていくつも要素を追加することが分かっているとき(判断と結合子のセットなど)に一気に追加する際は便利です。
文字の追加
チャート上の記号をダブルクリックすると、文字を入力/編集することができます。また、右側のパネルが変化し、フォントの設定などができるようになります。
スタイルのコピー
テンプレートでは配色がある程度整っていますが、単純にチャートに記号を追加するだけでは、モノクロになってしまいます。そこで、スタイルをコピーします。スタイルのコピーには、以下の手順を行います。
- コピーしたいスタイルが設定された記号を選択
- 「フォーマットペインター」ボタンをクリックして、アクティブにします
- 「フォーマットペインター」がアクティブな状態で他の記号をクリックして選択すると、最初に選択していた記号のスタイルがコピーされます。
- この状態で新規記号を追加すると、スタイルが適用された状態で新規追加されます。
- 「フォーマットペインター」ボタンをもう1度クリックすると、他の記号を選択してもスタイルがコピーされなくなります。
- 別の記号を選択した状態でフォーマットペインターをオンにすると、今度はそのスタイルがコピーされるようになります。
オブジェクト(記号)の連結
記号を選択すると、図のように薄い青の矢印のハンドルが出ます(円のハンドルがついたバウンディングボックスではありません)。
- これをドラッグし、他の記号の上でドロップすることで両者が線で連結されます
- ドロップする位置を、他の記号の輪郭線上にすることで、連結位置を細かく調整できます。
- 他の線にドロップすることで線同士の結合もできます
- 接続線のタイプを選択することで、線の折れ曲がり方などを選択できます
- Shiftキーを押しながらドラッグすることで、直線に固定できます。
- 単に矢印ハンドルをクリックすると、選択した記号がコピーされ連結線で結ばれます
- Ctrlキーを押しながらドラッグすることで、連結線で結ばれたコピーの作成を、任意の位置で行えます。
連結線のスタイル
連結線のスタイルは、上のメニューアイコンからも行えますが、矢印「なし」などが設定できないため、基本的には右側のパネルで行う方が便利だと思います。
フローチャート記号の意味
スタート・末端
処理の開始や、処理の終了といった「末端」を意味します。すべての連結が末端に接続されていない場合、どこかおかしい場合があります。
処理・プロセス
なんらかの計算や、 RPA であればボタンのクリックや文字入力などの処理を記述します。
条件判断と分岐
if文・if構造などの分岐を示します。通常、この記号から2本の線で処理の流れの分岐を示します。3ルート以上の分岐は、条件判断記号を2つ、3つと増やすことで表現します。
ループ記号を用いない場合、この条件判断によりループの終了条件を記述します。
ページ内結合子
フローチャートが長くなりすぎたり、線が複雑になりすぎたりした際にページ内の別の場所から続けて書く場合に使います。また、条件分岐のラベル(はい・いいえ、条件を満たす・満たさない)としても使います(条件分岐は単に線に文字を書く場合も多い)。
入出力
ファイル等へのデータの入出力を示します。
手動入力
ユーザーからの入力がある/待つ場合などに用います。
サブルーチン・定義済み関数
(フローチャートを読む対象に)よく知られた定義済みの「機能」を示します。別のフローチャートを参照する場合もあります。
具体的な描き方
フローチャートでは、まずスタートから始めて、プロセスの記号を用いて処理順に記載していきます。
そして、条件分岐が必要な場合やループ処理が必要な場合に、条件判断の記号を用いて分岐用の条件 / ループの継続・終了条件などを記載します。
入出力記号や定義済み記号、手動操作記号なども使えた方がいいですが、自分で書く場合には最悪プロセスですべて記載してしまっても、最初は問題ありません。
とくにGitMindを使う場合、色などのスタイルで区分も可能なのでまずは「処理の順序を書き出す」「分岐の位置と判断条件を書き出す」「どこで合流するか、合流しないかを確認する」といったことを重視しましょう。
おわりに
フローチャートの歴史はかなり古く、そのために現代的なソフトウェア開発には対応できない部分も多くあります(たとえば、何も「判断」していないのに与えられたデータによって処理が変わるようなプログラムがあります)。
しかし、幸いなことに RPA や人間が行う実務についてはそのような特殊な手法は多くありませんので、フローチャートで記述することができます。
何より、実際に RPA を作成したり、実務の整理を行う前に概要を把握できるので、使いどころを見極めればとても有効なツールとなりますので、GitMindの使い方とあわせて覚えておくと便利です。
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