釣りタイトルでお届けします。楽介です。とはいえ、「投資はギャンブルだ!」とか「今は株高円安、落ちてから買うのが正解だ!」とか、「今はバブルだ、すぐに崩壊する(毎月定期)」とか言いたい訳ではありません。
さっさと結論に行きましょう。新NISA最大の罠は、上限が1800万円「固定」であること、年間投資額が最大360万「固定」であることです。これは金額が少ないと言いたい訳ではありません。大丈夫、楽介も1800万埋められるかどうか微妙な線です。そんな稼いでません。
強調箇所を見ていただければ分かる通り、トラップポイント(回避不能)は金額が額面で固定であることです。
詳しく考えてみます。
みんな大好き複利計算
よくある複利計算を考えてみます。
我々一般庶民が節約を頑張ってサーバー代にもならないblogを頑張って書いて、ようやく1年間に捻出できる金額を100万円としましょう。分かりやすく(120万だと計算面倒ですからね)。
これが年利5%だと1年後には105万円、2年後には110.25万円、3年後には115.7625万円……と増えて行くのがみんな大好き、インデックスファンドに長期投資でよく見るリターンです。これに対して、毎年インデックス投資していくと、どんどん利益が上乗せされて老後お金に困らないよね。
というお話です。何もおかしくありません。
で、日銀のイールドカーブコントロールの修正だの、マイナス金利解除だの春闘だ賃上げだなんだかんだで話題のインフレです。
こちらは、年率2%程度の成長が望ましいとされているようです。筆者が知る程度の古典的マクロ経済の理論では、変動為替の環境下での通貨価値のコントロールはとても説明しきれないので、ここは「そうなる」としておきましょう。
すると、今度は、100万円の品物の価値が、1年後には102万円、2年後には104.04万円、2年後には106.12万円……と上がっていくことになります。
この物価上昇に対して、日本の銀行預金の金利が端数切り捨てレベルで少ないから、投資に回すべし。そもそも年金も不安だし、日本経済の先行き不安だし、中小企業診断士なにやってんだ仕事しろ(すいません)、というのがネットで金融リテラシーが高めの人たちのマクロなトレンドかと思います。
ここまでは何もおかしくないですね。楽介もそう思いますし、新NISAとiDeCoに全力出してます。
ただ、ここまでのよくある話で一つ抜け落ちてる話があります。
それは、インフレで金銭に対するものの価値を複利計算であげていますが、新NISAに入金できる額は当たり前のように「一定」であり、入金される金額の貨幣的価値も「一定」であると仮定されている点です。
そう、「固定」なんです。
計算式を逆にしてみましょう。入金力を1年後も100万円と仮定します。しかし、その100万円で購入できる品物の価値は、現在の価値基準からすると102万円ですね。そう、インフレによります。つまり、102万円を1.02で割った100万円が、将来の102万円の価値です。では、来年の入金力100万円を同じく1.02で割ってみましょう。
\[100\div1.02=98.0392\]
現在の価値で98万円ちょっととなりました。もう1回割って見ると、96.12万円くらいです。嫌な予感がしてきましたね。
表にしてみましょう。
2024年から毎年頑張って入金していこう、と計画した場合の表です。2041年時点で合計1800万円になっていますね。
しかし、理想的とされる(前年比の)インフレ率2%でも2041年の入金額で現在購入できる品物(100万円の価値)を比較すると、何と約71.4万円程度になっています。インデックスファンドの分かりやすいリターンの5%成長で比較すると、なんと43.63万円程度の価値しか入金できないということになります。もし積立し続けてキャピタルゲインの恩恵を受けつつ、物価上昇の圧力も感じていた場合、実際に入金される金額の心理的な価額は、両者の中間くらいになるでしょう。
どんな罠か
結局のところ、新NISAの罠とは、先行して(最短5年)1800万円を埋めないと遅れた分だけ損をする(というよりは得をしない)制度ということになります。金持ち優遇制度であると言われても仕方がない部分ではありますし、将来的に新NISAの枠にも課税されるんじゃないか!? とかそんな心配をする必要もないくらい、インフレを継続させさえすれば、新NISAに入金できる金額の価値は減損し続けるということになります。こども世代が新NISAを見ても旧つみたてNISAと同じくらいの入金価値だと考えるかもしれません。
まあ、だからといってこの制度を利用しない手はないです。どちらかというと、「積立設定して、後は死人のごとく放置」していると、投資の成果が思ったより上がらないということになりますね。例えば、同様の考え方で、新NISAが30年後に4000万円になったとしても、現在の価値からすれば(物価上昇の分だけ)目減りしていることになります。
インフレが継続すると考えるのであれば、最短で1800万円埋められるのであれば埋めた方がいいですし(生活防衛資金を残すのがインデックス積立投資の定石とはいえ)、インフレに伴って賃上げが順調に推移した場合は、その分入金額を上乗せした方がよいでしょう。
毎年、同じくらいの価値を入金したいというのであれば、毎年のインフレ率(とはいえ、インフレ率にも色々な算出基準があるので難しいですが……)を乗した2024年基準の価値を算出し、年間の入金額とするといいと思います。
まあ、罠とか言いましたが、結局結論は「入金ゲーム」であり、現在価値に割り引こうが割り引くまいが最短で入金するのがベストという点においては変わらないです。ただ、「長期で分散すればよい」という言葉に甘えすぎると危険ですし、インフレや収入の増加具合によっては、特定口座への投資も実施すべしということになるでしょう。