中小企業診断士の2次試験で意識したい2つのこと

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中小企業診断士の楽介です。

診断士合格、登録後もあまり試験対策的なことを発信してきませんでした。というのも、「出題された問題に助けられたな」と感じていたためです。つまり、運ですね。

世の中では「運も実力のうち」「運を引き寄せるために努力する」なんて言いますが、どんな努力が運を引き寄せたのか腑に落ちていなかったんですね。

しかし、資格取得後も引き続き(というか、試験勉強中よりも)経済学、経営学等々関連する学問について学んだ甲斐もあって、なんとなく「何の運がよかったのか」が分かってきたので、勉強中の方の役に立てばと思い書こうと思います。

1つ: フレームワークと理論は別

特に、事例1, 事例2辺りで引っかかることがありそうなのがこの点です。何も、フレームワークが悪いと言っている訳ではありません。

ただ、フレームワークの多くは、それ単体で経営の意思決定を行えるものではない、ということは強く意識しておく必要があります。

具体的に言うと、「SWOT分析は、強み・弱み・機会・脅威について定性的に分析して企業の内部環境と外部環境を理解するのに便利なフレームワークです」。この中で、定性的な分析という言葉には、理論があります。また、内部環境・外部環境についても、理論的な区分があるでしょう(まあ、はっきりと分けられない点もありますが)。

しかし、強み・弱み・機会・脅威については、定性的に、つまり多分に診断士・コンサルタント・受験生の主観によって分類が行われます。

また、意思決定の場合、クロスSWOT分析に発展させて、それぞれの要素を組み合わせますが、無数にある組み合わせの中でそれを選ぶのは、少なくとも診断士試験の上では追加調査も実施できませんし、主観になります。

だから、「フレームワークは役に立たない」「コンサルなんて綺麗なパワポを作るだけだ」と言いたいわけではありません。

このような主観が混じっていながら、ある程度以上合理的な判断を提供するのが中小企業診断士や経営コンサルタントの本分のひとつです。もっと言えば、「なんとなく分かっている当たり前の判断」に対して、「あなたの考えはこの観点から間違っていません」と後押しをする役割があると言えます。

多数のフレームワークを学習し、合理的な判断をすることに慣れていれば、判断にもちいるべき要素、材料を整理して「悩む」のではなく「思考する」ことができるようになります。

このように、フレームワークで要素を網羅することを、ここでは思考の「横軸」としましょう。

では理論は何か? というと、心理学(流行の行動経済学)や、情報の経済学、古式ゆかしい科学的管理法といった現象を説明するものが理論になります。マズローの欲求5段階説などは、最近、「否定された理論」としてやり玉に挙げられがちですから、こちらは理論ではなく「フレームワーク」に分類した方がいいかもしれません。

診断士試験で出てくる分かりやすい理論は、ゲーム理論でしょう(情報の経済学)。ただ、残念なことに中小企業の事業環境、ましてや診断士試験の与件文ではゲーム理論が使えることはあまりありません。

それよりは、行動経済学に区分される、ミクロな個人の動きに焦点を当てた理論の方が使いやすいでしょう。

このような理論を思考の「縦軸」として扱います。

先に述べたクロスSWOT分析において、4象限のいずれを組み合わせるかは直感によってしまうところが大きいのは間違いないでしょう。しかし、直感によって組み合わせた内容が、理論で接続できるものであれば、その解答は「筋がよい」ものとなります。

とはいえ、個々の理論については、経済学者などの興味を惹く事例から導き出されたものが多く、扱いづらさは否めません。

そこで、フレームワークは横軸としておいておいて、上手く当てはまる理論が見付からない時の縦軸をどうするか? という点が「運」に近づきます。

1つ: 自社以外の事例を知る

いや、「そんなの当たり前だよ」と思うかもしれません。確かに、中小企業診断士試験において、多数の事例を知るという点を重視した参考書は多くあります。

しかし、ここでいう事例とは、「他人の解答」だとか、「広報の人がメディアの取材に応じて小綺麗にまとめて答えた内容」だとかではありません。中小企業診断士やコンサルタントが事例の報告として、いい点、悪い点も述べたものがあるといいでしょう(実際問題、文献としては協会向けの小冊子の事例紹介が一番参考になるという、個人で挑む受験生にはなかなかつらい面はあります)。

広報の人が発表したような内容があまり参考にならないのは、自社の不利になる点が記されていないという点がひとつ。もうひとつが、自社に特有の企業文化、風土について内部の視点となってしまうため、把握が困難になってしまうからです。

診断士やコンサルタントによる外部の視点であれば、このような外部と異なる点について言及をしますし、事業課題の根幹に関与している場合が多いので、ここがないと情報としては、「へーほー、すごいねー」で終わってしまいがちです。自分の知らない事業環境とその企業文化・風土について知っておくことで、メディアの取材を受ける広報の人と同様に、自分に染みついた「当たり前」を客観視、分離できる下地ができあがります。

また、多数の事例を知ることで、文章では省かれているディティールをある程度想像し、的外れにならない提言をまとめられるようになります。これは発想を飛躍させるのとは少し違い、「経数管理ができていない」と書かれていたら「Excelも使ってないな。キャッシュフローも把握できていないで支払のタイミングで慌てたりしてるだろうな」とある程度のあてをつけられるという意味です。これが、「月末の店舗ごとの集計に手間がかかっている」であれば、「クラウド会計ツールの導入くらいかな」という温度感です。

なお、これを「運」といったのは、筆者が合格したタイミングの事例2が、「どう考えても八丈島の明日葉生産者の話だな」と試験中に分かったからです。島の規模や景観、明日葉がどう扱われているか……など、かなりのディティールで想像することができたため、大きく外さなかった点が大きかっただろうと考えています。

なお、診断士が書いたレポート以外に、筆者が参考になりそうだなと思うのは、

  • 地方の中小企業が発信しているYouTube動画(八丈島はこれで知っていました)
  • 雑誌「事業構想」
  • 中小企業のblog

などです。

やはり、中小企業が出す一次情報は強いです。しかし、残念ながら、blogの多くはマーケティング、SEOのために書かれており、事業環境を理解するには情報量が不足します。

それよりは、YouTubeなどの動画であれば、背景に映り込んだデスクの様子(PCがある、紙が多い、雑然としている)、導入されている機械、設備の新旧といった手触りを見ることができますので有用です。

事業構想については、やはり企業がプレス向けに出しているという点では一歩劣りますが、サービスを販売する目的・認知を獲得する目的で書かれたものと種類を異にしますので、比較的参考になる印象です。

まとめ

なんとなく、ずっと思っていた内容がようやくまとまったので記事にしました。

この点については、(どの書籍かは忘れたのですが)大前研一氏が自著の中で喝破していた「BCGのPPMを使って、負け犬に分類されたからって撤退するからダメなんだ、自分はそこで踏みとどまって事業を行うように進言する(うろおぼえ)」という文章が思考の足がかりになっています。

BCGのPPMは各事業に対する意思決定を助けるマトリックスではありますが、確かに、通説通りに行動していたら「撤退」になります。ただ、みんなが撤退したらそこには何も残らず、確かに消費者が困るだけです。

ただ、だからといって負け犬に逆張りで投資し続けていれば勝てるというものでもありません。先の大前研一氏の文章では、「じゃあどう判断するの?」みたいなことは書かれていなかったのでずっと悩んでいたのですが、そこで使えるのがゲーム理論だな、と気付いたことが大きかったです。

中小企業診断士試験の1次試験に関する書籍では、ゲーム理論について「同時手番ゲーム」を解説し、ナッシュ均衡・パレート最適について述べる場合が多いと認識しています。

一方で、PPMにおいて、「事業環境が縮小しつつある」といった事業環境の認識は、逐次手番ゲームといえます。つまり、「市場規模が縮小しつつあり、競合も撤退しつつある」と認識した上では、敢えて投資を行うことで自社が利益を最大化できるという理論が成立します。

とはいえ、本文で記載した通り、それを二次試験の与件文から読み取れることも少ないです。ですから、「フレームワークはあくまでも横軸・思考の幅を広げて情報を余さず整理するもの、後は勉強してきた自分の頭と理屈を信じる」というスタンスがよいのではないかなと思います。

こんなこと、「教える」「合格させる」が売りの書籍や予備校では言えませんからね。

 

楽介でした。

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