正しい帳簿保存の確認については国税庁の窓口や税務署に問い合わせましょう。
また個別企業の税務に関しては税理士にご相談ください。
厄介ですよね、電子帳簿保存法。どのくらい厄介かというと、弊社の顧問税理士に「いや特に対応しなくていいんじゃないっすか~」と言われてしまい絶望するくらい厄介です。ただ、会社の経理担当にしても社内 SE にしても、世の中が「電子帳簿保存法に対応しなきゃ!」と大騒ぎで CM を打っているのでよく分からないまま対応ツールを探しているという方もいるんじゃないでしょうか。
ということで、実は古くからある電子帳簿保存法と 2022 年現在、何がそんなにヤバいのか。そしてどうやったら効率よく保存できるのかを考えてみたいと思います。
電子帳簿保存法について
参考:https://www.nta.go.jp/law/joho-zeikaishaku/sonota/jirei/02.htm
大事な点が、現在は2023年12月31日までの宥恕期間であるということです。特に、電子商取引における義務規定は2024年からは必ず対応しなければならないという点を意識しておく必要があります。
概要(の雑な現代語訳)
国税に関係する帳簿や書類を保存する義務がある人(ようするにほとんどの法人とフリーランス)は、「一貫して」コンピューターを使用する場合は、データで保存してもいいですよ。という法律。とのことです。
ただこの「一貫して」について、「記録段階から」の有無で(1)、(2)が分かれているみたいです……。 diff 持ってきてもらってもいいですかね……。
いきなり法律文法に惑わされますが、国税に関係する帳簿・書類に関しては
- 帳票を集計したりなんだりして作られる「帳簿」。取引には用いられない
- 更に決算において1. 帳簿類を集計したり棚卸ししたりして作られる決算書類関係
- 取引に用いるために、自分たちが発行する、請求書とか領収書とかの書類。帳票。
- 3. と違い、相手方から受け取る請求書とか領収書とかの書類、帳票。
という区分があるために、こんなわけの分からない表現になっているんですね。ちなみに、普段税務と縁がない社内 SE からすると口から泡を吹いて倒れそうになりますが、これらの国税関連の帳簿・書類は紙での保存が原則でした。電子帳簿保存法によって特定の条件を満たせばデータで保存することが認められるようになりました。
後に述べるようにそうも言っていられない部分もありますが、しかし、「紙は紙のままでいい」と判断できることは重要です。悪意がなくても、税理士もソフトウェア提供者もあなたの会社がどこまでデータ化を必要としているか? は正確に把握できません。ご自身で「ここは紙のままの方が効率がいい」と判断するという意識が重要です。特
では楽介の属性である中小企業診断士はどうか。業務プロセスの改善が得意な診断士であれば、この辺り得意な人もいると思うので、商工会などに問い合わせてみてください。
ただし、そもそも IT 系は苦手だよ……という診断士の先輩も多いので、プロセスの棚卸しだけお願いして、実際のデータ化においてはソフトウェアベンダーと協力するという形が現実的かと思います(このブログのように OSS を導入して……とかは期待しないように)。
電子取引には要注意(特にFAX)
「紙は紙のままで……」と言いましたが、紙が許されない例外があります。
それが電子取引になります。こちらは義務規定となっていて、該当する場合は問答無用でデータ保存が必須になります。やったぜ。この電子取引ですが、
「電子取引」とは、取引情報(取引に関して受領し、又は交付する注文書、契約書、送り状、領収書、見積書その他これらに準ずる書類に通常記載される事項をいいます。)の授受を電磁的方式により行う取引をいい(電子帳簿保存法2五)、いわゆるEDI取引、インターネット等による取引、電子メールにより取引情報を授受する取引(添付ファイルによる場合を含みます。)、インターネット上にサイトを設け、そのサイトを通じて取引情報を授受する取引等
なるほど、分からん。ということで箇条書きにしてみましょう。
- EDI (電子データ交換 Electric Data Intechange)、主に企業間で取引情報(発注情報、請求情報など帳票類に該当するような内容)をデジタルデータで交換するシステム。企業用 EC といった方が正直、現代では伝わりやすいです。昔は専用線とか使っていた。
- インターネット等による取引。とにかく HTTP, HTTPs とか、TCP/IPとかに乗っかっていたら全部。以下を全て含むと思いますが、MECE とか関係ないので……こういう文章
- 電子メールによる取引情報。メール本文。
- 添付ファイルによる場合を含む。画像やPDF による受発注書類など。
- インターネット上にサイトを設け、そのサイトを通じて取引情報を授受する。 EC サイトですね。
さて、電話による口約束はともかくとして、未だに現役なところが多い FAX はどうでしょうか。こちらは国税庁の Q&A からひきましょう。
参考:https://www.nta.go.jp/law/tsutatsu/kobetsu/sonota/kaiseir030628/pdf/01.pdf
PDFファイルの44ページ目
ファクシミリを使用して取引に関する情報をやり取りする場合については、一般的に、送信側においては書面を読み取ることにより送信し、受信側においては受信した電磁的記録について書面で出力することにより、確認、保存することを前提としているものであることから、この場合においては、書面による取
引があったものとして取り扱うが、複合機等のファクシミリ機能を用いて、電磁的記録により送受信し、当該電磁的記録を保存する場合については、法第2条第5号に規定する電子取引に該当することから、規則第4条に規定する要件に従って当該電磁的記録の保存が必要となることに留意する。
明治の文豪レベルの長文ですね! 整理すると、
- アナログ時代の、電話をつないだ状態で少しずつ読み込み、送信を行う FAX は電子商取引ではないので紙での保存が大丈夫
- 同じくアナログ時代の、かかってきた電話を受けて通話をしながら少しずつ印字を行う FAX は電子商取引ではないので紙での保存が大丈夫
- 複合機やPC FAX などの一度メモリやデジタルデータ・ファイルに保存する形式の FAX は全て電子商取引に該当するので、データ保存が必須
といえると思います。
自分がアナログ FAX で相手が複合機の場合、とか。アナログ FAX 同士だけで間にデジタル的な中継サービスが含まれる場合、とか、そういう部分については触れられていませんが、相手の通信方式については知りようがない(FAX として音声データにエンコードされている)ので問われないと推測されます。
正直、 FAX のこの、恣意的な運用が可能な規定は、高齢の経営者一人で運営する個人商店や伝統的な職人などに配慮した規定だと推測しています。すでに PC が導入されている企業であれば複合機でデータ化した方が合理的ですが、アナログな FAX を運用している・それで事足りる小企業が新たに PC を導入してもメリットは薄いでしょう(データも散逸する可能性が高いです)。
そして FAX を一律に電子商取引と定義してしまい、仕方なくこういった小企業が郵送による受発注や電話による口頭の受発注に戻ってしまえば、ただでさえ高くないといじめられている日本の生産性が著しく低下することは想像に難くありません。
この電子商取引における保存義務というのが、今回の改正におけるやべー点です。
「優良な電子帳簿」とは?
参考:https://www.nta.go.jp/publication/pamph/sonota/0018004-061_01.pdf
- 優良な電子帳簿の要件を満たしたもの
- 概ね、2022/1/1 以前の電子帳簿保存法に対応した保存形式
- 青色申告の特別控除が受けられる
- 過少申告加算税の軽減措置を受けられる
- 事前に所轄税務署長宛に申告書の届出が必要
青色申告:https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/2072.htm
青色申告+α みたいな制度だと思っていただいて大丈夫だと思います。帳簿を頑張って税務署の仕事を楽にすると、人件費分節税できるというイメージでいいと思います(怒られそうな表現)。
事前申告は必要ですが、2023年12月31日まで、みたいな規定も見当たらないので将来の目標として据えておいて、まずは2023/12/31 までの宥恕期間内に電子取引に関しては対応を終えておくことが先決でしょう。
電子帳簿保存法の影響の「ヤバさ」を見る
決算関係書類:★1つ
- 貸借対照表
- 損益計算書
- 試算書
- 棚卸表
- 等
あんまりやばくないです。というのも、手書きで作成している場合はほぼなく、デジタルデータで作成する場合、 Excel などの汎用表計算ソフトで作る人もほとんどいないでしょう(それができる人は、この程度のデータ保存で苦労するとは思えません)。関係する人間を限ることができるため、担当者のコンプライアンス意識がそれほど高くない場合でも改ざん対策も容易です。
また、会社経営において非常に重要な書類であるため、専用のソフトウェアにより管理される傾向にあり、クラウドサービスでなくてもバックアップの作成を促されるなどの対策がされています。
総じて、最初からデジタルデータで作成しているのであれば「わざわざ出力しなくてもいいんだ、楽だな」程度の扱いになりがちです。
ただし、データの保存については慎重を期す必要があり、クラウド会計ソフトを利用するのであればパスワードの強度や二段階認証などセキュリティに充分な注意を払う必要があります。ローカルやオンプレミスのストレージに保存する場合は、セキュリティや適切な権限設定に加えて、データのバックアップやバージョン管理などが行えるストレージを使うといいでしょう。クラウド会計ソフトを使わなくても、 Dropbox や OneDrive などのクラウドストレージに保存するのもいい考えでしょう。オンプレミスであれば、 Nextcloud や Owncloud を導入するのも手段のひとつです。
決算書類は基本的に集計がベースとなりがちで、専用のソリューションの導入効果が高いです。そのため、(もし導入していなければ)これを期に会計ソフトの導入を検討してもいいと思います。
国税関係の帳簿類:★1.5個
- 買掛帳
- 売掛帳
- 総勘定元帳
- 仕訳帳
- など
決算関係書類よりもちょっとだけ「やばい」です。というのも、日々の取引において変動がある帳簿類のためです。
とはいえ、 Excel などで管理することもほぼないでしょうから、会計ソフトを利用してさえいれば、日々の会計処理の中で自然と対応できることがほとんどだからです。
こちらも、基本的には日々の業務の集計、別のツールからのインポートなどを行うことで完成する帳簿となるため、専用の会計ソフトの導入をお勧めしています。
決算関係書類や帳簿類については、「業態」「ビジネスモデル」などによる変動がほとんどないため(買掛、売掛が実質的に存在しないという例はあり得るでしょうが)、ソリューションに対するテーラリングがほぼ必要ありません。そのため、以下の項目と比較して諸手を挙げて電子帳簿保存法への対応、専用ツールの導入をおすすめできます。
各社の状況を考慮し、テーラリングが必要なのは社内のコンプライアンス、権限設定くらいなので、税務関連以外の支援も恐らくほぼ必要ないでしょう(そもそも、ソフトが強力な会計処理支援となっています)。
スキャナ保存:★5個(本当は0個)
参考:https://www.nta.go.jp/publication/pamph/sonota/0018004-061_02.pdf
なんだかポップなパンフレットまで作って推進する気満々ですが、ここで一気にヤバさが跳ね上がります。スマホの写真で OK! とか歌っていますが、スマホの写真をどう管理するか? までは触れていません。騙されないようにしましょう。
しかしスキャナ保存については、次の改正が起きるまでは無理に対応しなくてもいいはずです。何故なら、紙でもらっている時点で電子取引にはならず、「義務規定」には含まれないからです。
電子帳簿保存法に対応したソリューション各社が最も力を入れているのがこのスキャナ保存でもあります。というのも、
- 経理担当者が紙の伝票類を受け取る
- スキャンする
- 最低限の検索要件を付与する
- 対応するのであれば、優良な電子帳簿の検索要件を付与する
- タイムスタンプの付与・または改ざん防止の措置がとられたストレージに保存する
といった、アナログからデジタルへの変換作業が必要だからです。
ここに OCR とファイル操作を導入して「検索要件の付与」「適切なストレージへの保存」といった作業を自動化できるのが専用ソリューションの強みです。
Optical Character Recognition/Reader、光学的文字認識とされますが、概ね「画像データから文字を認識・抽出する」と訳してしまって問題ないと思います。
古くからの(それこそ光学的)パターン認識方法の他、現在ではAI, ディープラーニングによる OCR も登場しており、ペーパーレス化の需要などにより高性能化が進展している傾向にあります。
ただし、 OCR が高性能化しても「誤認識」、「読み取りエラー」などの問題はついてまわります。特に、手書きの場合などは顕著に表れます(人間様だって汚い文字は読み取りに苦労したり間違えたりするわけですから、さもありなん)。
また文字が認識できても、帳票の種類や取引先ごとにレイアウトが異なるという問題があります。電話番号を金額と認識してしまう、なんて目も当てられません(これは OCR の問題とは異なります)。
レイアウトについては事前にテンプレートを設定する・AIによるパターンマッチングを利用する、OCRによる文字列を利用する、これらを複合するなど複数のソリューションが存在しますが取引先の数が多ければ多いほど帳簿保存以前の業務負担が増加する傾向にあります。
それらを加味した上で、それでもデジタル化によるメリット(検索性・省スペース)が得られると判断できると判断できるまで、スキャナ保存は後に回すことをオススメします。
電子メール本文による取引:★10個
できるだけ電子メール本文による取引は、これを期にやめることをオススメいたします……。
領収書などが電子メール本文により取引されることは考えづらいですが、それでも「取引」に該当する情報のやりとりは行われます。
しかし、電子メール本文は適切なフォーマットが作成されることが保証されておらず、「取引先」などの情報で検索することが難しい場合があります。
また、個人ごとに発行されたメールアドレスによる取引はもとより、代表メールアドレスを共用していても使用する PC, システムが複数あり、それぞれ内容が異なる場合、電子帳簿保存法の定める「可視性の確保」を満たせないことが想定されます。
そのため、どうしてもメール本文での取引がやめられない場合は、 PDF などに出力して所定のストレージに検索性を確保する情報を入力した上で保存することをオススメします。
参考:https://www.nta.go.jp/law/joho-zeikaishaku/sonota/jirei/pdf/0021010-200.pdf
書面のページ表記7, PDFでのページ数9
とはいえ、発行側・受領側双方に全くメリットがない取引なので、冒頭の通りやめることをオススメします。
取引先がお互い、数社に限られている場合などで、電子メールの書式を統一することで簡易的な EDI として運用することは可能でしょう。その場合は、通常のコミュニケーションに利用するメールクライアントではなく、専用に開発・カスタマイズされたソフトを利用し、専用のメールアドレスを利用することが想定されます。
既存の発明(電子署名や暗号化など)を活用できるため、こういったシステムを利用しているのであれば無理に変更する必要はないでしょう(日本に数えるほどしかない事例とは思いますが……)。
参考:https://www.nta.go.jp/law/joho-zeikaishaku/sonota/jirei/pdf/0021006-031_03.pdf
書面のページ表記24, PDFでのページ数32
また、通常、電子メールソフトは本文、添付ファイルともに改ざん防止措置、バージョン管理などがとられていません。そのため、データを PDF に変換して保存する先がこれらの措置がとられていても、改ざん防止に関する事務処理規程などを行う必要があります。恐ろしい……
電子メールの添付ファイルによる取引:★4個
参考:https://www.nta.go.jp/law/joho-zeikaishaku/sonota/jirei/pdf/0021006-031_03.pdf
書面のページ表記3, 4, PDF でのページ数11, 12
添付ファイルによる取引は、添付ファイルを保存しておけばよいと考えられますが、電子メール本文に取引情報が含まれる場合には電子メールも保存しなければならないと記載されています。タイトルや総額くらいの添付ファイルだけでも判断できる、通常のコミュニケーション内容であれば電子メールに記載されていても問題ないだろうと思われますが、補足事項などは電子メールに記載せず、添付ファイル内にすべてを含める必要があります。
また、添付ファイルによる取引の保存について、「メールソフトによる検索では不十分である」との見解が含まれていることから、メールソフトによる検索が充分にできる状態≒電子メール本文の保存も考慮した方がいい状態であると言い換えることもできると思います。
運用上は、取引先がお互いにファイルの命名規則を決めて相互に送信することで業務負担を軽減できると思います
日付-書類種別-取引番号-発行者-受領者-金額.pdf
20240101-領収書-01234-楽介-楽太-10000円.pdf
またこれらのファイル名において、㈱のような合字は環境依存となり、相手先や保存環境によってはエラーとなることがあるため、(株)と記号と文字を分けたり、株式会社と開くことをお勧めします。
参考:https://www.nta.go.jp/law/joho-zeikaishaku/sonota/jirei/pdf/0021006-031_03.pdf
書面のページ表記24, PDFでのページ数32
問 38 電子メール等で受領した領収書データ等を、訂正・削除の記録が残るシステムで保存
している場合には、改ざん防止のための措置を講じていることとなりますか。
【回答】
訂正・削除の記録が残るなどの一定のシステムを使用することによって改ざん防止のため
の措置を講じていることとするためには、保存だけではなく、データの授受も当該システム
内で行う必要がありますので、改ざん防止のための措置を講じていることとはなりません。
別途、不当な訂正・削除を防止するための事務処理規程を制定して遵守するなどの方法によ
って改ざん防止のための措置を講じることが必要です。
添付ファイルに関しても、電子メールソフトは改ざん防止措置、バージョン管理などがとられていません。そのため、添付ファイルを保存する先がこれらの措置がとられていても、改ざん防止に関する事務処理規程などを行う必要があると考えられます。恐ろしい……ただ、この回答について謎なのが、同文書において
問31 電子取引を行った場合において、取引情報をデータとして保存する場合、どのような
保存方法が認められるでしょうか。
【回答】
電子取引を行った場合には、取引情報を保存することとなりますが、例えば次に掲げる電
子取引の種類に応じて保存することが認められます。
1 電子メールに請求書等が添付された場合
⑴ 請求書等が添付された電子メールそのもの(電子メール本文に取引情報が記載された
ものを含みます。)をサーバ等(運用委託しているものを含みます。以下同じです。)自
社システムに保存する。
⑵ 添付された請求書等をサーバ等に保存する。
と、まるで事務処理規程が必要ないかのように記載されていることです。この文書からは読み取れませんが、添付ファイルの場合は問題ないのでしょうか(等、はやめてほしい)。
ちょっとここは重要なので問い合わせてみたいと思います。
FAX による取引: ★0 or ★5
参考:https://www.nta.go.jp/law/tsutatsu/kobetsu/sonota/kaiseir030628/pdf/01.pdf
PDFファイルの44ページ目
こちらは先に記した通りですが、アナログな直接紙に印刷される FAX であれば紙のまま保存することで、対応しないという選択がとれます。
が、大体の場合、複合機によるメモリー受信またはファイル受信になると考えられます。
この場合、電子取引となり、電子メールの添付ファイルと同様に FAX のメモリーやファイル受信領域は充分な改ざん防止措置がとられた領域ではないと考えられます(この後そういう複合機も出てくるかもしれませんが)。
その場合、 FAX による取引では改ざん防止等の事務処理規程を定めて、バージョン管理などの機能を有するストレージに保存することになると思います。面倒臭い……
現実的で安全そうだけど非効率なメール、FAXの対応: ★2
2022/10/10 追記
参考:https://www.nta.go.jp/law/joho-zeikaishaku/sonota/jirei/pdf/0021006-031_03.pdf
書面のページ7~8, PDFファイルの15~16ページ目、
問13 電子取引で受け取った取引情報について、同じ内容のものを書面でも受領した場合、書面を正本として取り扱うことを取り決めているときでも、電子データも保存する必要がありますか。
【回答】 電子データと書面の内容が同一であり、書面を正本として取り扱うことを自社内等で取り決めている場合には、当該書面の保存のみで足ります。ただし、書面で受領した取引情報を補完するような取引情報が電子データに含まれているなどその内容が同一でない場合には、書面及び電子データの両方を保存する必要があります。
電子メールや FAX によるデータ受領の際、訂正・削除の履歴が残るストレージへの速やかな保存で充分かどうかの判断が、現在できない点やどの時点で受け取りと見做すのかといった不確定要素が大きい以上、メールや FAX については認証タイムスタンプの付与または事務処理規程の定めを設けることが不確実要素を減らすという点では最適解と考えられます。
しかし、認証タイムスタンプは50人未満の中小企業においては結構な負担となります。
であれば、迅速な対応のために電子取引で「コピー」を受け取り、「正本」を郵送してもらうといった手段が考えられます。上記の通り、電子データと書面内容が同一である必要はありますが、 EDI や EC が導入できず、特に FAX による運用が残ってしまう事業環境においては「電子取引」を避けるといった非効率な方法に逃げざるを得ないといったことが考えられます。
現実的で安全、効率的なメール、FAXの対応: ★3
2022/10/10 追記
アナログな伝票のやりとりに戻ることを推奨するという、生産性ブログにあるまじきことをしましたが、法制定の理念に対して規定が厳しすぎるので仕方がないです。タイムスタンプの要件だってもう少し軽くてもいいような気がします……。
文句はともかく、現実的に EDI などが導入できない場合は、クラウドストレージの活用が考えられます。
メールを送信してもらう代わりに、クラウドストレージのファイル共有機能を利用するという手段です。これであれば、確実に最初から訂正・削除履歴の残るストレージに保存できるのでタイムスタンプの付与および事務処理規程は不要だと確信的に運用できるでしょう。
大手クラウドストレージ利用の場合、唯一の懸念が中国大陸との取引です。大手クラウドストレージ業者は大体米国企業であるため、中国本土からのデータの閲覧や送信が禁止されていることが多いです。
その場合は、…… EDI や EC などを回避策として用意する、 VPN を用意する。オンプレミスのシステムを利用する、中国国内のシステムを利用するといった方法で対応が考えられます。
EC サイトによる販売:★1個
参考:https://www.nta.go.jp/law/joho-zeikaishaku/sonota/jirei/pdf/0021006-031_03.pdf
書面のページ表記22, 25,PDFでのページ数30, 33
参考:https://www.nta.go.jp/law/joho-zeikaishaku/sonota/jirei/pdf/0021006-031_01.pdf
書面のページ表記18, PDFでのページ数26
EC サイトを運営している場合、日々、数十~数百もの伝票類が発行されます。これらは PDF として保存しなければならないのでしょうか?
これについては、
保存されるデータがXML形式等の取引情報に関する文字の羅列であっても、請求書等の
フォーマットや日付・金額等の項目ごとに並べた一覧表形式で表示する等により視覚的に確
認・出力されるものについては、電子帳簿保存法の要件を満たすものとなります。
や、
ただし、定形のフォーマットに自動反映されるデータベースについては、税務調査等の際
に、税務職員の求めに応じて、実際に相手方へ送付したものと同じ状態を定形のフォーマッ
トに出力するなどの方法によって遅滞なく復元できる必要があります。
また、
発行した請求書データの内容について変更されるおそれがなく、合理的な方法により編集
された状態で保存されたものであると認められるデータベースであれば問題ありません。
とされていることから、受注情報が管理されているデータベースを有する EC サイト、また EC サイトを管理する受注管理ツール類から定型フォーマットで出力する場合は特別ファイルの保存は必要なく、データベースさえ保存できていればいいと解釈可能です(データベースが保存され、改ざん防止措置などが執られていることが前提)。
この観点で言うと、 EC や EDI に限らず、発行側は何らかの会計ソフトを利用していれば、出力機能を利用することで「遅滞なく復元」が可能となりますのでさほど負担がないと考えられます。
EC サイトでの購入
参考:https://www.nta.go.jp/law/joho-zeikaishaku/sonota/jirei/pdf/0021006-031_03.pdf
書面のページ表記24, PDFでのページ数32
EC サイト等で購入した商品の領収書などは、当然、電子帳簿保存法に則り保存することが必要です。必要に応じて、検索要件などを付与した状態で保存しましょう。
また、保存義務はダウンロードを行わなくても伝票類が表示可能になった段階で必要となるとのことです。
インターネット上でその領収書等データを確認できることとなった時点が電子取引の授受
があったタイミングだと考えられます。領収書等データが提供されている以上、ダウンロー
ドしなければ保存義務が生じないというものではありません。
なお、別途同一の記載内容の書面が郵送されてくる場合には、正本(どちらか一方)のみ
の保存で足ります。
まとめ
- 会計専用ソフトは入れよう
- 決算関係書類、帳簿類は最初から会計専用ソフトで編集すると楽
- 保存や改ざん防止等の措置についてはクラウドソフトが有利
- EC に限らず請求書等(明記が確認されているのは請求書のみ)は合理的な方法で編集・変更のおそれがなければデータベース保存で問題ない
- (でも伝票の打ち間違えとかは怖いよね)
- メールによる取引はやべぇ
- 添付ファイルを利用し、バージョン管理ができるクラウドストレージを使っても改ざん防止措置が必要
- EC サイトはデータベースがしっかりしているサービスを選ぼう
- 自社 EC やメールによる受注の EC はやべぇ
- 個人事業レベルでも利用できる安価な ASP が多いので、それらの利用を推奨
- 電子取引の場合、「訂正削除ができない、または訂正削除の記録が確認できるシステム」がほぼ必須となるのでEC サイトによっては対応ができない可能性がある。オンプレミスシステムの場合、特に注意が必要
- EC での購入では早めに領収書をダウンロードして保存する
いや、タイムスタンプつけた方が楽じゃない?
楽介もそう思いました……。
こちらの「みんなのタイムスタンプ」は初期費用 0 円、1ファイル当たりタイムスタンプの費用 20 円とスモールスタートに最適です。1年間のファイル保存期間がついてくるのも、クラウドストレージなどを契約していない会社さんにとっては嬉しいポイントです。
終わりに
多分、追記や編集等が入ります。
国税の出している資料についても、見方によっては必須でないように読めたりする場合があって注意が必要です。
これだけ見ると、「書類」は改正後には別に訂正・削除の確認は不要なように見えてしまいます。が、電子取引に関してはこの表とは別に必須とされているので注意が必要です。やめてくれよぉ。