残業続きだった経理の白井が、Pythonを覚えて人生を変えた話

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白井のつらい日常

渋谷のとあるIT関連会社に派遣されている白井は、30目前の29歳。趣味はアイドルがでてくるソーシャルゲームと、数ヶ月に一回、仲間たちと出かけるサバイバルゲーム。

「は~、ま~た残業だよ」

と、ぼやく彼の仕事は経理。先日、名ばかりの出世をしたせいで、他の経理部門の日常業務を束ねなければいけなくなってしまっていました。そして、最終的には月次業務の担当者ということになっています。

ITに強い会社といえば聞こえはいいですが、アプリ販売の課金やEC部門の販売、B2Bの売掛金の管理など、入金分野だけみても多岐に渡っています。そのため、一応システムは導入されているのですが、結局人の手――白井が表計算ソフトを駆使して会計ソフトに入力するといった業務をしていました。

「あ、またこれ入金期限すぎてんじゃん……んもー、営業は~」

閑散とした社内に白井の愚痴が妙に大きく響きます。ITに強い会社の経理なら、処理も楽だろうと思っていましたが、意外とエラーとか、部門ごとの違いとかで Excel で処理しないと行けない業務が多くあります。そのため、白井のデスクには、ぼろぼろになった Excel の入門書が置かれていますが、最近はすっかり開くこともなくなりました。Excel なら、割と詳しい自身があります。

ただ、だからって楽になっているかというと、微妙な気がします。

例えば、今白井を苦しめている未収金は、担当部署・担当営業に連絡をして確認が必要です。Slack で問い合わせが要りますが、Excelファイルの送信元を確認して、更に担当者をチェック。そこから Slack で該当者にメンションを飛ばすという、まあ、確かにアナログ時代よりは楽なのかな? といった作業。

それでも、コロナ以前はもうちょっと楽でした。というのも、ほとんどの社員が出社していたので、直接出向いたり、担当が誰かといったことを口頭で聞く、伝言を頼むと言ったことが簡単にできたからです。

しかし、そこはITに強い会社。出社しなくていい社員は全然出社しなくなりました。白井たちは、残念ながら郵送されてくる伝票もあるため、出社が必須です。

「今日アプデの放送なんだよ~」

楽しみにしているゲームの公式配信に、このままでは間に合わないなとがっかりしながら、トイレにいくついでにスマホを開きます。上司にばれないようにSNSを開いて(以前、一度上司にばれたことがあって非常に警戒しています)愚痴を書き込みます。

すると、昼休みに愚痴った書き込みに、IT に強い経営コンサルをしている楽介から返事が来ていることに気付きます。経営側の目線で話をされても、お説教されている感じがしてピンと来ないというのが本音なのですが……。

「Python でも覚えなよ。電帳法でもっと面倒になるよ」

古くからの知り合いなので、言うことも端的で詳しい説明はありません。それに、実はこっそりプログラムに手を出したことがあるのですが、挫折したことがありました。

独学での挫折

Python という言葉は、白井もなんとなく聞いて知っていました。転職を考えたり、IT系いいな……と眺めていると大体出てくるからです。流行っているんだろうな~とは思っていました。

そこで、インターネットの入門サイトで調べて、ちょっと手を出したことがあります。

Python は、人工知能( AI )や機械学習の分野で注目されているプログラミング言語なので、経理や一般事務に該当する自分にはあまり関係ないと白井は最初、感じていました。しかし、実際には普通の Web アプリケーションやデータ分析、それから Excel などの表計算ソフトの操作にも使えるらしく、それなら白井の仕事にも使えるかなと考えを変えたのです。

実際、Python は他のプログラミング言語と比べると、読みやすく、英語が苦手な白井でもとっつきやすく感じました。記号の量が少なくて、 Shift キーを使わないといけない機会も少ないので普段、日本語と数字のタイピングばかりの白井でもとっつきやすいと感じました。

ただ、基本的な機能を学習してもその先の、「どうやったら自分の仕事に役に立つか?」ということが分からずにモチベーションを保てなくなりはじめました。

そのうち、分からないところが増えてきてネットで調べるつもりがソシャゲやSNSに逃げてしまう……といったこと増えて勉強をやめてしまったのでした。

学校に行ってみよう

このままでは行けないと思った白井は、楽介とお酒を飲む機会があったので、それとなく聞いてみました。

「通信講座でもいいけど、そういうことなら学校行くのがいいよ、やっぱり」

楽介はあっけらかんと言いました。

「えー、学校って、高いじゃん……」

「そりゃまあ、そうなんだけど」

楽介は苦笑いしながら説明をします。

本だと、分からないところをどうしても読み飛ばしたりすることが多くなります。プログラムで言えば、新しい機能・関数やループなどの処理。思い当たる例がなければ、学生時代の数学の教科書に出てくる、公式や証明の式などが近い例だと言います。分からないから先に進めると、もっと分からなくなってしまう。

教師がいれば、先に進んでしまった場合でもどこが分からないかアドバイスしてくれ、戻らないといけないところを教えてくれる。そういう勉強の仕方、理解の仕方を外部から教えてもらえるというのが重要だと言います。

「後は、近くに似たレベルの仲間がいると頑張れるってことは多いよ」

「あー、まー」

全社的なテレワークで、仲がよかった別部署の友人とほとんど会えないことを思い出して白井はうなずきました。確かに違う部署でも一緒に頑張る人が近くにいるのはありがたいです。

「いや、でもなあ……、実は……」

言うと呆れられそうで言えなかったこと、独学で Python を勉強しようとしたけど、どうしてもプログラムを使って自分の仕事をよくするイメージが湧かず、勉強が続けられなかったことを、白井は白状しました。

それを聞いたら、てっきり楽介は呆れると思っていた白井でしたが、意外にも、「そりゃそうだ」とうなずいてくれました。

まずは動くものでないと、興味が湧かない

「こことか多分向いてるよ」と楽介がスマホを出しました。

「プログラミングの高速学習?」

なんかうさんくさいなぁと思って白井はキャッチコピーを読みました。

「高校の授業とかで、試験があるとかでもなければ、いきなりプログラミングの基礎の基礎からなんてのは難しいんだよ」

と楽介は言います。それより大事なのが、興味を持てることと、意味があって動くプログラムを思い描けることが重要とのこと。

特にこれからは、AI が人間に言われたプログラムを書けるようになるから、どんな風に動くプログラムが必要か説明できて、それから想像できることが大事だとのこと。

「それで、この techgym の何がいいんだよ?」

白井は半信半疑です。

「まあ、いきなりゲーム開発からスタートってところだな」

楽介は言います。そもそも、楽介は中学校時代に、クラブ活動でプログラミングの基礎を学んだそうです。そのときは、中学生らしくゲームを作る……といっても、先輩が書いたプログラムを少し変えたり、意味を調べたりするところからスタートしたそうですが。

それでも、動くゲームが自分が書いたように変わるということで、興味を持ち続けられたといいます。

それから、課題の進め方が実務に近いという点が大事だと言います。学習において、確かに基礎は大事ですが、実務において「基本があるからそれを元に何かを作ろう」ということはほとんどないと言います。

確かに、白井も自分が勉強している内容と、実務の内容が違いすぎてモチベーションを保てずにいました。

そうではなくて、まずは解決しないといけない課題があって、そこから調べたり、試行錯誤したり……という工程を経てプログラムは完成します。

「慣れると、やりたいことがあって、一番楽そうな言語を調べてそれを作りながら勉強する、なんてこともできるぞ」

楽介は笑います。

「まあ、資料請求なんかは無料だし、とりあえず話を聞いてみるってのは大事だぞ。うじうじしててもなんにもならん」

学習してみた……結果

白井は、無料カウンセリング、体験入学を経て正式に入学を決意します。

入学から4ヶ月、趣味のサバイバルゲームや、ソシャゲのイベントなどもこなしつつ、勉強を継続しました。卒業なしのサブスク型なので忙しかったり、趣味に時間を費やしたいタイミングであれば休みがちにしても大丈夫なのが精神的に続けやすい……というか、戻って来やすいところが嬉しいポイントでした。大学時代、講義を一回さぼったら、次から行きづらくて単位を落とした経験のある白井としては、これがなかったら続けられなかったかも、と思ったのは1回や2回ではありませんでした。

もちろん、会費が2万円なのも嬉しいところです。もっと高いと、さすがに休んだだけで胃が痛くなってしまったでしょう。

そうして、趣味と両立させながら学習を進めた結果、白井の業務にはいい影響が出始めていました。

「部署ごとにフォルダをわけといて、フォルダ名で処理を判定すれば全部まとめて処理できるよな」

各部署のシステムから吐き出された入金確認用CSVファイルを眺めながら、白井はつぶやきます。実践的なプログラム学習を通して、業務の課題が見えて、それを達成するための方法を逆算して考えられるようになってきたのです。

そこで、白井は上長にかけあって各部署から集められたCSVファイルを整理するルールを周知・徹底させました。どうしてもルールが破られてしまうときには、日次業務がメインの部下たちに依頼して修正してもらいました。

最初は「面倒なことを押しつけられている」といった顔をしていた部下たちでしたが、そもそも白井が進めるPythonのプログラムによって日次業務がどんどん楽になっていますから、どれだけルールにのっとって整理することが大事で、それでトラブルが防止できるかも分かって来たようです。

そんなある日、定時きっかりで会社を出た白井がSNSを覗くと、学生時代の友人からメッセージが来ていました。

「最近調子よさそうじゃん。こっちめっちゃきついんだよ」

白井はにんまり笑って、それにメッセージを返します。

「いやーPythonでも覚えたら? このスクールなんか、向いてると思うんだけど」

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