中小企業診断士に登録されたので実際役に立つかを解説

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ちょこちょこ試験についてや実務補習についての記事を書いておりましたが、無事、12/1づけで正式に中小企業診断士になりました。

名称独占資格のため、今までは[登録予定]とか明記しないといけなかったのですよね。これで堂々と、「経営コンサルの国家資格、中小企業診断士です!」と言えるようになりました(とはいえ、既に研究会活動などをしているので、「それどころじゃねぇ!」というのが本音ですが)。

この記事では、ネットで言われる「中小企業診断士は役に立たない」「あんな試験は簡単だ」について解説したいと思います。折しも、今年の二次筆記試験から1ヶ月経ち、当落が出ない中勉強のモチベーション維持に苦労している方もいると多いタイミングと思いますので、あくまでも筆者の体験を元に解説したいと思います。資格まとめサイトと違って、主観的ですが実際に勉強して取得していますから、参考になると思いますよ!

この記事がお勧めな人
  • 中小企業診断士試験を受けようか迷っている人
  • 1次試験や2次試験の勉強中の方
  • 勉強を継続するか、役に立つか悩んでいる人
  • 人事評価としてどう考えるべきか悩んでいる人
  • 会ったことがある中小企業診断士はみんな役に立たなかった! とお怒りの方

診断士試験なんて、ちょっと仕事をしてたらすぐに合格できるって本当?

たまに見かけますが、「診断士試験なんて、社会人をある程度働いていたら簡単に合格できる!」という言説です。

これは、半分正解で、半分不正解です。詳しく見て行きましょう。

1次試験に関して

まず1次試験についてですが、これはまあほぼ「そうですね!」と言えます。ただし、自分の専門分野に限ってという注釈がつきます。

例えば、筆者はIT系の専門家とまでは言わないですが(色々やっているので)、かなり詳しいと言えます。そんな私からすると、1次試験のIT問題はボーナスでした。試験の性質上、足切りに引っかからなければ平均点で合格ラインが判定されますので、安定して80~90、勉強しないで得点できるのは大きな強みでした。

とはいえ、他の科目についてはそうでもありません。マーケティング分野や製造分野はそれなりに絡みがあったので勉強しないでも50~60点、ぎりぎりとれるかな? 程度ですし、会計・簿記などは全く触れたことがないのでカンで回答するしかないでしょう。法務の問題などは何を言っているかすら分からない、というような状況からスタートです。

もし、これを勉強しないでも全部合格できる方がいらっしゃったら、凄まじい知識量だと思います。1次試験は、理屈ではなく、本当に知識がモノを言います。経営者や経営企画をしていても、業種による偏りがありますので難しいでしょう。

資格をジャンル問わず、まんべんなく取得している方であれば、「ある程度働いていたら簡単に合格できる!」のかもしれません。

ちなみに、この1次試験が役に立つか? で言うと、恐らく診断士にならなくてもそれなりに有効に働くと思います。というか、筆者はその段階から実務に役立てていました。現場のマネジャーレベルに必要な知識(そして、悲しいことに中小企業レベルの現場マネジャーは有していない知識)が一通り網羅できますので、自分の業務に加えて、社内の他業務の理解や円滑に推進したい場合、また、DXを目的としたクラウドやRPAの導入時に役立てられるでしょう。

現状どうなっているかは知りませんが、この1次試験合格にも名称を定めて資格化しようという動きがあるくらいには、有用な知識が手に入ります。

ただ、筆者の感覚ではまだ「知識レベル」であって、きちんと役に立てられる知見のレベルには到底届かないと思います。

 

2次試験に関して

これについては、実は1次試験よりも「社会人である程度働いていたら合格できる!」と言える人は多いかもしれません。

難易度について言えば、1次試験よりも間違いなく高いです。令和2, 3年度試験は、1次試験の合格率が例年より高くなっていますが、例年であれば20%前後でさほど簡単な試験ではありません。そもそも、試験範囲が広すぎるため、受験しようという人が限られている点も考慮に入れた方がいいでしょう。

2次試験はそれを突破してきた受験生が、相対評価(と言われています)で競争するより難易度の高い試験です。明確な正解がない問題が全体の80%ほどを占め、競争であるため絶対に合格できるという保証がない過酷な試験です。

ですが、こっちの方が簡単だったという人を筆者は知っています。

一人は、経営系の学部に在籍している大学生。もう一人は、そもそも経営コンサルタント兼研究者として長年活躍していた先生です。

ある意味では、元々専門家なのでわざわざ受験する意味はあるのだろうか……? と思ってしまう人たちです。受験料も安くないですしね。

それ以外の、他の士業を持っている先生や公務員、銀行員、元大会社の系列会社役員など、色々な人とお話しましたが、2次試験を勉強しないで突破できたという人はその2名だけでしたね。

「仕事をしていたら普通に合格できる」と合格した上で豪語できる人は、そういった方ですので、逆にそんなことは言わないだろうな……と思います。

この2次試験が役に立つか? と言われると1次試験の知識を、最低限の知見に変換する役には立つかな? と思います。また、診断士登録前の実務補習や実務従事の段階から報告書を書くことが求められます。その時に書く力が求められますので、その基本的な訓練も兼ねているように思います。

 

結論

「診断士試験なんて、社会人をある程度働いていたら簡単に合格できる!」と言える人がいないとは言わないが、その人は多分そんなことを言わない。

 

実際、役に立つの?

独占業務がないから、独立に向かない

これはYesともNoとも言い辛いです。筆者がすぐに中小企業診断士として独立するか? と言われたらNoです。というか、実務従事の恩師に止められています

一応、各支部・協会に登録することで支部の仕事を受けることができますので、独占業務がないことがそこまで不利か? と言われるとそうでもないように思います。ただし、そのレベルの収入では、診断士の資格を持って転職なり社内のポジション・キャリアをアップした方が通常は年収があがりますし、仕事も楽になります。

何せ、ブラックな発言ととられがちな「経営者目線」を従業員の立場で持てますからね。場合によっては経営者よりも経営者目線になってしまって、煙たがられることもありますが……(笑)。

また、高難易度の国家資格が必要なお医者さんだって結局のところ、医師免許をとったからすぐに開業できるか? といったらそんなことはないですよね。弁護士、税理士、公認会計士、みんなそうだと思います。そもそも、中小企業診断士と違って、合格から登録までより厳しい実務従事を求められる場合もあります。

中小企業診断士は難易度で言うと、士業の中でも低いために簡単に登録できるので「独立できないじゃないか! 意味ない!」と感じるのかもしれませんが、それは独占業務がある他の士業を舐めていると言えるのではないでしょうか。どの士業も、そんな簡単ではない、というのが経営のプロの視点です。それが分からない人が独立しても、まともな経営診断と助言ができないで、独立に失敗するのは、むしろ当然です。

なにより、士業はどれも社会的責任の重い業務を担当することが求められます。登録してもある程度修行が必要だと感じるくらい謙虚でいたほうがいいように思います。

しかし、実力があれば別に診断士の資格がなくても同じ仕事ができてしまいます(協会の仕事や、有資格者の助言が必須となる補助金などの業務を除く)。そういう意味で、独占業務がないのは少しマイナスかもしれませんね。

会ったことある中小企業診断士は役に立たなかった

まずは、ごめんなさい。もしかしたら、診断士に登録してすぐに独立した人かもしれません。上記した通り、登録していきなり単独で仕事したら、品質が低いかもしれません。

もうひとつ考えられるのが、無料の専門家派遣の診断士の先生だったかもしれません。

無料派遣だからといって、その先生の腕が悪いというわけではないです。ただ、派遣先の企業にとって無料であっても、診断士の先生には派遣元の団体から報酬が支払われています。また、無料派遣時に、何に対する支援か? ということが決められている場合があります。

診断士も生業としてやっているので、料金以上のことはなかなか手を出せません。「ちょっと相談に乗ってよ」でも無責任なことは言えません。経営者、そして従業員の生活がかかっている企業に関わることだからです。

そうすると、「ちょっとしたこと」でもより詳しい調査が必要だったりで、とてもではないですが無料派遣の枠の中には収まらないことが多いようです。また、決められた目的以外では補助金の目的外利用となり得るケースもあるかもしれません。

そういったケースもありますので、「会社全体のことをまるっと見てほしい」場合は、1年単位や半年単位などで、実績のある診断士の先生と契約されることをお勧めします。それ以外の無料派遣などの場合は、目的を絞って、そこだけに注力させることを意識すると効果が出やすいと思います。

役に立たないから名乗らない人多いんじゃないの?

著名な方でも、名乗らないだけで中小企業診断士の資格を取得している方もいます。

これについては、

  1. 独占業務がないから特別名乗る必要がない
  2. そもそも知名度がそんなに高くない(資格に興味がないと全然知らない)
  3. 名前がよろしくない(半分主観)
  4. 資格がカバーする範囲が広すぎるため、自分の専門分野が分かりづらい

といった要素が絡んでいるように思います。

3, 4について少し補足します。

もともと、中小企業診断士の設立時の目的は「経営の診断」でした。経数管理などがメインと考えてもいいでしょう。健全な経営が行われているか、どうかです。それが、制度の改正により「経営の診断および助言」と助言が追加されています。

ただ、中小企業診断士という名前を聞くと、どうしても「いいか悪いかの判断だけなんだな」と思ってしまって、まるで国から試験官が派遣されてきてテストされるような、そんな気分になってしまうのではないでしょうか? ということで、もっと顧客企業によりそえる名称を自ら名乗るのだと思います。

4についてはそのままで、人事が得意だったり、マーケティングが得意だったり、いろいろいると思います。筆者の場合は、現時点ではやはり経営の中でもITが得意です(CIOのお誘い待っています 笑)。

その得意分野を強調するために、独自の肩書きを作るパターンもあります。

なにより、それだけ著名な方が、わざわざ名乗らないのに勉強して取得する資格に価値があるかないか、といえばあると言えるのでしょう。

 

診断士試験に合格・登録を目指してよかったこと

まずはなにより、人脈が広がったことでしょう。みんな言いますが、その通りです。

ただ、筆者は悲しいかな、コロナ禍で実務補習を受けましたので飲み会なんかができません。おそらく、飲み会ができればもうちょっと色々仲良くできたと思います。

なお、予備校に通う目的を人脈作りとしている方もいるようですが、筆者は別にそれはなくてもいいのかな? と思います。オンラインの録画受講だけだったので、受験中に広がった人脈はゼロです。ITに強い強い言いながら、特別「SNSで受験しています!」とかも発信していないので、ずっと孤独に勉強していました(勉強仲間がいなくても合格できますよ!)。

それよりは、実務補習のときに一緒になった人や、先生。それから協会の研究会や勉強会での人脈の方が重要であると思います。横のつながり、同期といえば聞こえはいいです。輝かしい未来に向かっている感じがしますね。

ただ、診断士の仕事は人の生活基盤である企業の経営状態を改善することです。その重大な責任を考えると、先輩の助言・指導の方が重要なのは間違いありません。

それを考えますと、独占業務の有無が大きな問題でないことが分かると思います。独占業務はないですが、ほぼ独占といえる組織(人脈)が存在しています。

 

診断士登録をお勧めしない人

勉強し続けられない人。シンプルに、社会情勢(診断士的にいえば、外部環境)は変化し続けています。それについていくだけではなく、診断先企業にも助言していく以上知識のアップデートは必須です。また、単なる知識だけではなく、それを正しく評価するだけの見識もいるでしょう。

また、独立したり副業したりで収入を直接アップさせるのも大変です。一方で、資格維持のためには時間も費用も必要です。持っているだけなら持ち出しの方が遥かに多い資格です。

ですので、とりあえず持っておこう……というのにはお勧めしません。

資格手当がある企業さんでは、診断士登録ではなく、2次試験合格で資格手当が出るところも多いですので、無理に登録を目指す必要はないと言えます。

 

終わりに

晴れて正式に中小企業診断士となりましたので、今言えることをまとめて見ました。正直、単に独立を目指そう、年収を上げようというのであればプログラミングを学習した方が100倍マシだなぁと思います(笑)。努力のコスパはそんなによくないです。

とはいえ、他の専門分野との相互作用、シナジーやあるいはレバレッジとしては機能するというのが筆者の感覚です。

当ブログとしては、これまで通りみなさんの生産性を向上させる情報を集めながら、ちょっと経営側から見た視点も交えて行こうかなと思っています。例えば、あなたが RPA を学んでも、それを社内が受け入れられないときにどうしよう? といった話ですね。

今後も、頑張ってできるだけ楽に仕事をしましょう。

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